「枳(からたち)」……SSブログサイト。(銀魂中心。他雑多。只今ヘタリアとかBASARAとかも。)

淡いリアル 


 いつからだろう。夜の闇が怖くは無くなったのは。
 いつからだろう。自分が前よりも饒舌になった事に気付いたのは。
失った筈の身体が軋む音がする。だが痛みは無い。──判らない、から。

 鎧の身体になってから、周囲の現状全てが酷く霞がかった様に思える。
薄いフィルターを一枚通した様な、白いカーテン越しの世界に独り佇んでいる様な、そんな錯覚の中、独り佇んでいる。
感覚が無いという事はこういう事なのだろうか。触感も嗅覚も痛覚も快楽すらも無い、
有る意味静寂に満ちた世界に今ボクは存在する。
 いや、実際「存在」自体しているのだろうか。
存在──実体・基体・本質・本性など、他のものに依存することなくそれ自体としてあり、非本来的・偶有的でなく、絶対的・必然的にあるもの。現に事実として今ここにある事や物および人間の実存。現実存在。
 ──実体も無く兄に依存して生きているこの現実感の希薄さ。「存在」自体が曖昧なのが今のボクの真実。時に母の事も、兄の事も、自分の事ですら人事の様に感じられる事があって、そんな自分に戸惑う。戸惑うけれどどうにもならない。だって──判らない、から。
 そんな時、茫洋と、がらんどうの鎧の目を宙に彷徨わせていると、決まって兄が話しかけてくるのだ。脳裏──空洞の鎧の内側──に響いてくる兄の声。力強くも物悲しく聞こえてくるその声。心配そうな、切羽詰った様な、何かに縋る様な目付きをして、決まってボクを見てくるのだ。その兄の声に、ボクはその瞬間だけ、現実を見る。

「大丈夫だよ兄さん。ボクはここに、居るよ。」
「…兄さんのそばに居るよ?」

 ──不確かな実体を確固たるモノとする為に、言葉は存るのだろうか。
けれどやけに虚ろに響いた己の声に、また僅かばかりの当惑を覚える。
未だ在る筈の心が軋む音がする。其処にチクリ、微かなノイズが走った気がした。


参考:大辞林 第二版 (三省堂)
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