「枳(からたち)」……SSブログサイト。(銀魂中心。他雑多。只今ヘタリアとかBASARAとかも。)

08 愚者の恋話 


 5月。既に日中は汗ばむ程の陽気になってきている。世間は大型連休中だが、真選組には関係が無い。寧ろデモだテロだ何やらと反対に忙しい程である。
 其の多忙な中、土方は松平の元に久々に参上していた。近況報告、連休中の配置、武器弾薬の補充願等、つらつらと述べて粗方終了しかけていた矢先に、
「…テメェはほんっといい補佐役だなァ。」
と、松平が呟いた。
「は?」
突然の物言いに土方は呆気に取られる。
「いやァ、先日近藤とも話してたんだがな。テメェは良くやってくれるってよ。褒めていたぞ。」
「……そうかィ。」
そう云われて悪い気がする人間も居ないだろう。、土方も仏頂面は相変わらずだが、僅かばかりに照れ臭そうになる。

「しかしよォ。」
松平はそう続けた。
「テメェに惚れた女は、不幸だな、トシよ。」
またもや松平に云われた土方は、今度は流石に眉根を寄せた。
「…あんだよ唐突に。」
「テメェを女房に欲しがる男は五万と居るだろうが、テメェを夫に欲しがる女は居ねェだろうって事よ。」
「……ハァ?」
「もし結婚してもよォ、最初は良くても、終いにゃ逃げられるタチだぜ、テメェは。」
「……ハァ。」
「恋人や愛人としては最適だが、家庭に入るのには不向きだっつーてんだ。」
「……自覚はあるけどよ。」
「先ず何よりもテメェ自身を大事に出来ねェ男は、駄目だ。」
「……。」
「生き急いでいる様な男は、女を不幸には出来るが、幸せには出来めぇ。」
「……。」
「テメェなんざ、精々腰振って悦ばせる程度しか出来めぇ。そうだろ?」
「……。」
「まァ、テメェとならSEXだけの関係でも良いって女は山ほど居るだろうがよ。テメェは其れだけだな。」
「……云ってくれるな…。」
矢継ぎ早に繰り出される松平の言葉に、苦虫を潰した様な表情で土方はごちる。しかし反論しようにも、如何にも出来ぬ。
 土方は、己は人に幸福を与えられる人間では無い、と常日頃思っているからだ。ましてや愛の為だけに生きられる女という生物に、其の生物達が求めている愛情を与え続ける自信は、無い。土方が与えられるのは所詮快楽だけだ。一時の悦楽だけだ。快楽を愛情と勘違いして生きていける程、彼女達も愚かでは無いだろう。
 ──土方にも、唯一人だけ、特別に想っていた女は、居た。想っていた、だ。過去形だ。彼女はもう居ない。土方は、其の女からも逃げ出したのだ。
 何時死ぬとも判らぬ身の上、彼女の為を思って身を引いたと云えば聞こえはいい、が。畢竟ずるに、土方は逃避しただけだ。彼女の人生の全てを受け入れるという、責任を負うのが恐ろしかっただけだ。臆病な男である、唯、其れだけだ。そうして彼女を置いて故郷を出てきた其の時点で二人を結ぶ絃(いと)なぞ切れた、そう思っていた。
 しかし再度。運命は、絃は交錯し合う。再び出会った二人であったが、既に手遅れ。今度は彼女が手の届かぬ場所へと旅立ってしまった。絃は千千(ちぢ)に千切れ飛んだ。其れを紡ぎ直す事も償う事も、彼女の幸福を祈る事すらも最早出来ぬ。
 とんだお笑い種だ。彼女を想って泣く権利すら、己には無いと土方は思っている。
 ──今更後悔しても始まらぬ話だ。

「っツー訳で。」
重く深い思考。澱の海を漂っていた土方であったが、松平の言葉に現実に引き戻される。
「……?」
「死んでくれ、トシ。」
余りにも唐突が過ぎる松平の言葉に、今度こそ土方は目を剥いた。
「……ハァ!?何でそうなるんだ!!??」
「いやよォ、栗子がもうずーっとマヨラ13様マヨラ13様って煩くてよォ。」
「……ヘッ?」
「如何やらよォ、認めたくねェんだが、こんな事実、認めたらオッさん憤死しちまいそうなんだが」
「……??」
土方は訳が判らぬ、といった表情である。だが続く言葉。
「栗子はよォ、テメェに惚れちまったらしいんだわ。」
「……ハァ!?……そ、そうかィ……。」
嫌な予感がして腰が引けてくる土方。
「だがオッさんはよォ、テメェなんぞに栗子をやるつもりはこれっぽっちもねェんだよォ。」
「いや、俺も貰う気はこれっぽっちもねェからよ。」
「何ィイイ!!??栗子の何処が駄目なんだァアア!!栗子は最高の女だぞォオオ!!」
「駄目だなんて一言も言ってねェだろうがァア!!」
「ま、そういう事だから、死んでくれ。」
「ちょ、聞いてる!?俺の話聞いてる!!??」
何故か傍にあったバズーカを構えた松平を必死に押さえ付ける事暫し。莫迦げた攻防戦は体力差でか年齢差でか、辛うじて土方の勝利で終わった。だが漸く大人しくなった松平の目前で土方は疲労困憊しまくっていた。もう嫌だ。己の周囲はこんな奴らばかりなのか。心中で滂沱の泪に暮れる。
 そんな土方の事等気にも留めず、先程の錯乱が嘘の様に落ち着いた松平は、懐から取り出した煙草を銜える。
「トシよぉ。テメェに惚れた女も不幸だとは思うが」
そう云いながら火を灯し、ゆっくりと煙を吐き出す。そして。

「テメェに惚れられた女は、もっと不幸だな。」
そう云ったが最後、話は終わりだとばかりに手を振った。
土方は最早何も答えず、唇を唯歪め一礼したのみであった。
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「近土好きに50の質問」(2005/01/15版) | HOME | 再開

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