「枳(からたち)」……SSブログサイト。(銀魂中心。他雑多。只今ヘタリアとかBASARAとかも。)

月に迷い 星に導かれ 


まぁ、
たまには
いいんじゃない?



「あぁ!もうぜってーこっちだって!」
「が~!オレの言う事聞け!」
「はぁ?お前バカだろ。」
「オレが言うから間違いねーんだよ。」
「絶対、絶対絶対合ってるって!な?な?」


間。


「…京。」
「……。」
「おい、京。」
「………。」
「お…」
「あーー!!うるせーー!」

 …キレタ。何故これくらいの事でキレられるのか。妙なまでに感慨深げに考えつつ、八神庵はそっと溜息をついた。

「京。煩い、叫ぶな。」

京はやはりバツが悪いのか、押し黙る。そしてそっぽを向いた。完全無視の構えのようだ。それもそのはず。今、この二人は所謂「迷子」、である。
 大の大人の男二人が迷子、である。山中であるとはいえ、情けない事この上ない。そして、その原因を作ったのが、草薙京、この人であった。
バツが悪いのもムリはないが…。

 さて、どうするか。庵は考える。
まさか迷うとは思わなかった。京がペンションの周囲を散策しよう、と言ってきた時既に周辺の地理は頭に入っていたはずだ。その為、地図すらも携帯しなかった。
そもそも、京の言う事を聞いて付いて行った己も愚かである。
情けない…。
辺りはかなり暗くなり、風も冷たくかなり肌寒い。
 さて、どうするか。

 沈黙を先に破ったのはやはり京の方だった。
「なぁ…八神~~。どうすんだよ。」
…どうやら考えるのは俺だけの役目らしい。
「腹減ったぜ~晩飯~。」
呑気なものだ。
「なぁ。なぁってんだろ、おい。」
…集中出来ん。
「おい!無視か!!」
内心呆れながらも、しごく冷静に庵は言う。
「取りあえず、黙っていろ。」

拗ねた。

 取りあえずは静かになったので、庵は満足する。しかし、20にもなろうという大の男が拗ねて、こちらに背を向けてしゃがみ込み、ブツブツ何事かを言いながら草をブチブチ引き千切っている様は、はっきり言って

ウザイ。

ので放っておき、思考に戻る事にした。
さて…。まずは…。と思った矢先、京が小さく声を上げる。
「あ!」

庵は不機嫌さも露わにそちらを向く。
「今度は何だ。」
「八神、見てみろよ、ほら。」
いつの間に顔を上げたのか、京はじっと虚空を見つめている。促されて視線を向けると。
都会では見る事の適わぬ満天の星空が。そして、見事なまでの月が。

「ほぅ…。絶景だな。」

 先ほどまでは薄暗い程度だったが、今はもう闇が立ちこめている。木々の向こうに見えるそれらは、幾許か言葉を途切れさす事を可能にするほど見事なものだった。
 しばしの沈黙。月に、星に見惚れ今或る現実をも暫し忘れる。風の鳴く声と木々のざわめく音、そして微かな虫の音のみが周囲に響く。太古からずっと変わっておらぬだろう、夜空と自然の物音達。己が酷く矮小な存在のように感じられ。だが、そのままその中に溶けこめそうにも思えた。

自然はまだ人間を拒んではいない。

その雄大さに、クラリと意識が溶けて平衡感覚を失いかけた。
 揺れた視界に気付き意識を現実に戻す事に成功した庵は、あまりにもセンチメンタルな己のその思考に、思わず苦笑してしまう。

「あ。」
暫くすると、また京が声を上げた。
「……?」
またどうしたのか、と眉を顰めた瞬間
「水音だ…。」

 …水音、言われてみれば。それは本当に微かなまでの。先ほどまで苛立っていて気が付かなく、今は月に見惚れていた。だが山中では別に珍しくもない。川ならば暗闇の中で近付き、誤って崖などから落ちぬよう気をつけるまでだ。

……いや、水音…?…何処かで…。…もしや。
庵はその水音の方に歩いて行く。

「??何だ、どーしたんだよ、おい!あ、喉でも乾いたのか?オレもなんだよな~。」

能天気な声を発する京の言葉は敢えて無視した。それほど歩かずにその場に辿り付く。

「やはりな…。京、帰れるぞ。」

それは、小規模な滝だった。
「…って何で。」
「この滝の上方辺りにペンションがあった。覚えていないか?」
二人の宿泊するペンションの下方に滝があった。どうやら二人はごく近い周辺をグルグルと迷っていただけのようだ。遭難者にもよくある事。慣れぬ場所では一歩踏み出せばそこは別世界となるものだ。

「あ~そういえばそうだったな。何だ、すげー近いんじゃん、バカみてー。
でも、すっげー綺麗な夜空見れたしいいとしようぜ、なぁ八神!」

アハハ、と京が笑う。庵は誰のせいだバカは貴様だ、空などいつでも見られる、など等言いながら既に歩きはじめている。

「ぐ…てめぇ…可愛くねー。」
背後で悔しげな声が聞こえ、そして、庵も笑った。

「だがたまには迷ってみるのもいいかもな。」
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