「枳(からたち)」……SSブログサイト。(銀魂中心。他雑多。只今ヘタリアとかBASARAとかも。)

そう、そして君が居た他愛もない日々 


 これが俺達の日常だった。この時、俺達には確かに未来があった。それが例え陳腐な未来だったとしても。こんな腐りきった生ゴミみたいに、反吐が出るほど臭い世の中だが、夢くらい、見たっていいだろう?
君の為に見る夢なら尚更イイ…ってね。


 陽だまり揺れる午後のひととき。昼飯も食った。天気もイイ。風も気持ちイイ。鳥が呑気に鳴いている。さて、本日の午後最初の授業は何ですか?へー、社会科ですか。さいですかさいですか。このオ偉い大東亜共和国の偉大なる歴史ですか。三百二十五代も脈々と続いている、偉大なる総統様の歴史ですか。はいはい、さようで。素晴らしい。吐き気がするね、全くもって。大ウソばかり、この国の義務教育。

…サボり決定。やってられっか。

 普段からそうマジメでもない三村信史がサボるのを決意するには、そう時間はかからなかった。ちょいと音程の外れた(煩いな、音楽は得意じゃないんだよ。)鼻歌混じりで歩き出す。
屋上。そう、そこが俺の特等席。鍵がかかってますよって?わかってますよ、いつもの事さ。んなもん針金一つでおちゃのこさいさいってね。このサードマンをなめちゃいけないぜ、ベイビ。教室とは反対の、屋上へ続く階段へと向かおうとする。その時。

「三村?」

あちゃ。見付かっちまった。…って、この声は。
「どこ行くんだ?もうチャイム鳴っちまったぜ?先生もうすぐ来るぞ。」
 振り返ると、俺を不思議そうに見る七原秋也と視線が合った。暫し言い訳の言葉を探す。頭が痛いから保健室。…全く方向逆だってよ。便所便所。…トイレならすぐ目の前にってね。
まぁいい。言い訳止め止め。素直が一番。手をヒラヒラ振りへロリと笑う。
「サボり。じゃね、七原。」

七原のちょっと驚く顔が見えた。そのまま屋上へ向かおうとするが、手を取られ。
「サボりってお前…今日小テスト…!」
その時不意に思い付く。悪戯心が芽生える。俺って何てお茶目さん。俺を引き止める七原の腕を、反対にぐいっと引っ張り肩を抱き。

「お前も一緒に日向ぼっこ、しよ?」

ニッコリ笑ってズルズルズル。何やらギャーギャー喚いてるけど、無視無視無視。俺は眠いんだ、お前も付き合え。

「添い寝してくれよ。シューヤクン♪」

ワザと耳元で囁いたその言葉に、七原が唖然とした顔で脱力した。はい、ワイルドセブンの拉致成功。なんちゃって。

 付き合いがいい七原クンはブツブツ言いながらも結局俺に引っ張られ屋上に。俺のキーピックテクに目を丸くする七原に、俺が器用なのは周知の事実だろ?とウィンク返し。 辿り付いた俺の聖域、俺の特等席。風が心地よく頬を掠める。いつもの定位置にゴロリと寝転がり、指で七原を際に呼ぶ。七原も最初は怒ったような顔をしていたが、諦めたか共に転がった。

「…な?すげー気持ちイイ、だろ、ここ。」

暖かい日差し、心地よい風。目を閉じると柔かな光が瞼の裏で踊る。

「…あぁ、すっげぇ、イイな…。」
「だろ?ここ、俺のお気に入り。」
 テストの事はどうであれ、七原もどうやら気に入ったようだ。別に七原もマジメちゃんってわけでもないからな。ま、サボるのもたまには必要必要。こっそり覗き見た横顔が安らいだように微笑んでいる。気紛れに引っ張って来たが、連れて来て良かった。
そう、気紛れ。ただの気紛れ。

 暫し会話が止まる。授業中の静かなざわめきの気配だけが漂う。そして再び。とめどないお喋り。下らない話し。将来の夢の話しなんかしちゃったり。若いっていいねぇ。(思考がオヤジ臭いかもな、俺ってさ)

「なぁ、七原…お前って将来の夢ってあるのか?」
「夢…かぁ。漠然としててまだわかんないな…。」
「お前って歌上手いじゃん。歌手とかさ。」
「おいおい、規制されてるロックの歌手にどうやってなるんだよ。」
「外国行けばいいだろ。アメリカ。自由の国。こんな腐った国に居たら自分まで腐っちまうぜ。」
その言葉に七原が息をつき苦笑する。
「大した事ないよ、俺の才能なんて。」
「わかんねぇって、やってみないとな。」
一瞬の間の後、
「そういうお前の夢は何なんだ?」

そう問われ、俺は半身を起こした。そして七原を見てニヤリと笑う。
「俺の夢はビッグ過ぎてまだ話せないなァ。」
目を瞬かせる七原。その顔に俺は思わずぷっと笑ってしまい。
「何だよ、それ。」
呆れられたのか、拗ねられたのか。ふいっと背中を向けられた。ゴメンゴメン、怒るなよ、七原ってよー。俺は軽い咳払いをした後、幾分声のトーンを下げて言う。

「………俺の夢はさ…。お前みたいな奴が夢を叶えられる、そういう世の中にするって事だ。」
…背を向けていた七原が首を捻じ曲げ顔だけこちらに向ける。(ほら、もっとこっち向けって。)向けて来た顔に再びニヤリと笑い。
「な?ビッグな夢だろ?」
そして、笑う顔を真顔に戻す。これは真実、からかいじゃない。本心。七原が息を飲んだ事に気付いた。俺は言葉を続ける。

「俺は、頑張りたい奴が頑張れる、好きなモノに突き進んで行ける、そういう世の中にしたい。今のこの国を見てみろよ。はっきり言って、狂ってる。政府に少しでも反抗するようなそぶりを見せたが最後、ソイツは消されちまう。冤罪でもな。だから、皆政府の影に怯えて、政府の方針には絶対服従。逆らわなければ幸福は約束される。ささやかな幸福だけどな。そして、例えその幸福が不当に奪われたとしても、ただ我慢し卑屈に耐えるだけだ。
わかるか?こいつはな、成功したファシズムってやつなのさ。こんなタチの悪いものが世界中のどこにある?俺は、こんな不当な世の中に異議を唱えたい。俺は決して、この国に迎合しない。
…夢っていうよりも、決意、だな。
だからさ、お前は、なりたいものになれよ。自分のやりたい事、なりたい事に向かって精一杯頑張れ、走ってくれ。」

一気に喋った俺はここで一息付く。

「……お前…やっぱ、凄い、よな。」
感心した、とでもいうのか、しみじみと呟きながら完全に此方を向いた七原に、最後の決めゼリフ。
「俺が凄いのは当たり前だろ?ベイビ。」

…結局また呆れられたし。俺ってやっぱ最後の詰めが甘いのな。わかってるけどさ。

 また会話が途切れる。けれども、居心地の悪さは感じなく。自然な沈黙。穏やかな雰囲気。…まぁ、多少バツは悪いけどな。

 そろそろ6時間目が終わる頃かな…とぼぅっと考え込んでいたら、七原がボソッと話しかけてきた。
「なぁ、三村…ここってお前良く来んの?」
「んー?まぁ、そうだな。」
「…他に誰かここ知ってるのか?お前が来てるっての…。」
「いや?だーれも知らないぜ。教えたのはお前だけだ。」
「って…それって、いいのか?」
「何が?」
「いや、だって…ここって、お前の大事な…。…いいのか?」

 そこで、はたと考える。そうだ、俺は何故七原を、しかも最初に七原を連れてきたのだろう。というか、最初云々というよりも、ここは誰にも教えるつもりはなかったんだ。(俺は時には孤独が好きなのさ。)先ほどはただの気紛れだと思ったが。
 はっきり言って俺が日常一番良く一緒に居る奴ってのは、コイツじゃない。小学校からの友人の顔が浮かぶ。教えるとしたら、ソイツに真っ先に教えるってのが普通だろ。
 そうだ。その瀬戸豊にすら教えようとは思わなかったここを何故、気紛れとはいえ七原に。

何故?

「三村?」

思考の淵に沈みかけた俺を、七原の声が引き戻す。
「あ、ワリ…。俺、頭働いてねぇみたい。」
そう言って取り繕う。何故、何故…何故。すぐ真横にある七原の顔を、こっそり覗い見る。
 その時、此方を向いていた七原が、フワリと笑って俺に言った。
「ここ、教えてくれてアリガトな。気に入ったよ。」

ドキ。
(…ドキ?…は?何だ?)

七原は今度は笑顔をひそめて俺を見つめつつ、問い掛ける。
「また…一緒に来てもいいか?」

…ドキ。

俺は反射的に頷いてしまった。そして言葉が勝手に紡ぎ出される。
「お前だけに、教えたかったんだ。お前、だけだぜ?七原。ここは、二人だけの、秘密だ。」

 俺のその言葉に七原の大きな瞳が更に大きく見開かれ、そして、先ほどよりも嬉しそうに、照れ臭そうに俺に笑いかけてきた。
 俺は俺で、その笑顔に見惚れつつも、自分の言葉に自分で驚き。だけれども、妙に納得している自分にも気付いた。

 あぁ、そういうわけですか…。漸く納得。合点承知。いやはや、このサードマンともあろう者が。今まで気付かないなんて。何が「気紛れ」だって?
 でも、気付かなかったのはそりゃ仕方ない事だぜ、何でこの俺がオトコに…なぁ?オトコ?いや、七原にっだけどさ…。理性とは裏腹に、七原の笑顔を見て熱くなる自分を感じる。

リーンゴーン…

授業終了のチャイムが鳴り響く。

 七原が立ちあがり、HRに遅れちまう早く行こうぜ、最後くらいは出とかないとな、と俺に手を差し出す。その手を少しの戸惑いと共に握って、立ちあがった。己の手が、何故か汗でベタベタだ。緊張してか…?ハッ、動悸も激しい。お笑い種だ。

……俺は

自分で思っていたよりも

コイツの事が気に入ってた、みたいだ。
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