「枳(からたち)」……SSブログサイト。(銀魂中心。他雑多。只今ヘタリアとかBASARAとかも。)

ultra soul 


バシ!!!
周囲に響いたその音。

「って…っ。」

殴られた七原秋也が、長めの髪で表情を隠して俯いた。

 おいおい…物騒なこった。教室の外から様子を覗っていた俺は思わず肩を竦めてしまう。 だがまだ出て行く事はせず静観を決め込む。 何時の時代も、「恋愛」が絡むと問題は多少ややこしくなるものだ。

 事の起こりは大した事はない。七原が、自分に告白してきたオンナの子を振っちゃったわけで。(あらま、勿体無い)そのオンナの子も大概なんだけどな。彼氏が居るってのに、七原に惚れちゃってその彼氏を捨てたらしい。けれど結果は玉砕。彼氏さん、彼女が自分の元に戻ってくるっててっきり思ってたみたいだけど。ところがところがそのオンナの子は、七原のその清廉さにまたまた惹かれてしまったのかまだ七原ラブらしくって手に負えず。とうとうぷっつん切れた彼氏さんが七原んとこに殴り込みにきた。しかも仲間を二人連れてな。たちわりぃ。流石の七原も困り果てたのか、こういう事にかけては百戦錬磨なこの俺に相談してきた。 で、イザという時の為に俺が待機してるってわけ。
状況理解はオーケイ?では続き。

「七原さんよ、もてるからって曖昧な態度取らないでやってくれる?」
「そうそう、だとさー亜由美がさー諦めないじゃん?」
「…俺はちゃんと断ったって言ってるだろ。好きな人が居るからって。物分りの悪い頭だな。」
七原は殴られた頬を押さえる事もせず、睨みながら言った。
「ならなーんでアイツは諦めねぇんだ?…ウソつくんじゃねぇよ!!!」
 一人が七原の胸倉を掴んで凄んだ。七原を囲む三人は皆七原よりも幾分背が高い。威圧的に凄まれ、生意気な七原が少しはびびるかと期待したその三人のようだが。七原はやけに落ち付いていた。

…七原の奴、やっぱクソ度胸がありやがる。
俺は内心で感心する。

「…俺がどう言ってもお前らは納得しないと思うけど?だからさ、殴って気が済むなら殴れよ。それでチャラにしないか。」
七原のその言葉に周囲を囲んでいた三人が目配せしあった。そしてその中の一人(彼氏の奴だな)が舌打ちし他の二人に行こうぜ、という風に手を振った。
これで終わりか、結構引き際はあっさりしてるな、そう思った時。

「…ったく、親がいねぇ奴はこれだからイヤだぜ。」

ワザと聞こえるように、一人が吐き捨てるように言った。その言葉に、七原の大きな瞳が更に大きく見開かれた。初めての七原からの反応に、ニヤリと笑い掛けながらソイツが続ける。

「親がいねぇと、躾がなってねぇから人のモンまで欲しがりやがる。」

「…泥棒ネコ。」

七原の肩が震えるのが見えた。


俺は、はらわたが煮え繰り返る想いがした。コイツラ、マジで子供かよ…!

 七原は、確かに孤児だ。小さい頃に事故で両親を亡くし、それ以来「慈恵館」という施設に住んでいる。だがそんな事は問題じゃないだろ。親が居ないから?躾がなってない?泥棒ネコ?はぁ?
 現実は両親が揃っている家庭ばかりじゃない。両親がいなくても、立派に成長するものもいる。反面、揃っていてもひねくれちまうものもいる。(いやはや、俺みたいにな。)
七原を見てたらわかるだろ。コイツは、人一倍優しい。人一倍他人の感情には敏感だ。(己に向けられるある種の感情についてはとことん鈍いが)愛する者が去っていく痛みを知っている。だけれども、いや、だからこそ尚更人との繋がりを大事にする。俺みたいに、シールドを張っちまうような臆病モンじゃない。時には心配になるほどオープンなその心。それは、去られる痛みをも乗り越える強さを持っているからだ。

けれどもその過去の傷は、てめぇらが抉っていいようなもんじゃねぇんだよ!!
 俺はもう我慢出来ずに飛び出そうとした。その時聞こえた七原の低く唸るような声。

「…それがどうした。躾が幾等なってなくてもなぁ…、てめぇらみたいに人の痛みがわかんねぇヤツラなんかよりは全然マシ…なん、だよ!」

そう言い終わったのと同時に、七原は思い切り目の前のオトコを殴り倒した。殴った拳を振りながら不敵に笑い。
「だからそういうヤツラにはお仕置きしないと、な。」

ワォ!七原クンったらワイルド!多少驚いた俺に向かって七原はニヤリと笑いかけてきてきた。七原は、自ずから攻撃性を見せる事はない。だが、不当な方法で己や大事な者が傷つけられた時は、誰よりも激しく怒りを表す。
コイツのそういう所も気にいってるんだよな。俺は七原にウィンクを返しつつ手近のオトコを殴り付けた。
 その後はもうおわかりで。
サードマンとワイルドセブンのコンビに敵う者なし。


「終わったな。」
「さてと、帰ろうぜ。付き合ってくれてありがとな。」
「…ぷっ。何だよその頬。だっせぇ。」
「うるせーな。不意打ちだったんだよ。」
「舐めてやろっか?」
「…っ!…殴るぞ!!!!」
じゃれあいながら二人で帰り。ドサマギに俺は背後から七原に抱き付き。

「おっもい!!離れろうっとおしい!」
ベシベシ頭を殴られるが抱き付いたままで。抱き締める腕に力を込めた。
「…七原。さっきの、気にすんなよな。」
「ぁ?…バーッカ、気にするわけないって。」

そう言って七原は、身を離した俺に向かって
綺麗に笑いかけてきた。

その笑顔の、ちょっと腫れた頬は御愛嬌。
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