「枳(からたち)」……SSブログサイト。(銀魂中心。他雑多。只今ヘタリアとかBASARAとかも。)

主人公 


僕の記憶はどうなってしまったんだ?
何故、罪の意識しか残ってないんだろう?


 僕はあれからも何度か死んだようだ。記憶が常時混濁としている。この朦朧たる記憶は、生在る今の記憶なのか?それとも、何度も死んだ僕の以前の。

 否。
 何度死んだとしても、結局は「僕」は「僕」でしかありえないのだ。死の間際の己を失うほどの激痛。そして意識の拡散。だが、身体を文字通り引き裂かれる痛みの中で、何故かいつも感じる精神の安らぎ。解放される事に対する悦び。
(解放?何から?この生から?それとも罪からの?)

 身体の苦痛か、精神の苦痛か、どちらを選ぶ、と問われれば。
己は迷わず、前者を選ぶだろう。
鋭敏に知覚出来る苦痛よりも、己でも気付かぬ内に狂ってゆく、その甘美な痛みからこそ逃げ出したい。きっと僕は既に何処か狂ってしまっているのだろうけど。狂う事で何とか生きていけているのだろうけど。
あぁ、其れ程までに己の罪は重いのか。

 だが、どんな罪悪人であろうとも死によって等しく得られる筈の永遠の救済は、僕には訪れはしなかった。ゆるりと漂う意識の断片を集められ、繰り返されるメビウスの輪。

うおぉんうおぉんうおぉんうおぉんうおぉんうおぉんうおぉんうおぉん
うおぉんうおぉんうおぉんうおぉんうおぉんうおぉんうおぉんうおぉん


 僕を呼ぶ声がする。異形共の声が僕を迎える。…いや、これは本当は。
神の声、なのだろう。
救いを求める神の。救済を与える神が救いを求めるというのも滑稽だけれども。
けれども。
狂ってしまった神は、きっと悲しいのだろうから。悲しくて、泣くのだろうから。
泣かないで、欲しい。…何故か切にそう感じる。
…何故に?

また、始まる。

欠落のパラダイムを埋めるべく、僕は再び赤い空と出会った。


 何度も繰り返す生の中、何も変わっていないように見えるけれど、確かに変化し続けているこの歪んだ世界。僕が心臓の種をあげた首の者は、惚けた顔をして埋まったままだった。心臓の実がその周囲に三つ転がっていた。僕はゆっくりと近付き、ビクビクと脈動するそれを手にする。僕が近付いても首の者はピクリとも動かず、ただ虚空の一点を見詰めていた。…これで、彼は幸せに近付けたのだろうか。震える手に僅かに力を込めると、実はぐにゃりと歪んで赤い液体を滴らせた。

 袋の者が叫んでいる。
「私は首を絞めている父にこう言った。
父さん!死にたくない、死にたくない!
助けて、やめて、やめて!」

彼女は父に殺されそうになったのだろうか。そのトラウマが彼女のバロック?
…どうであるにしろ、僕には関係無い。己の事だけで皆精一杯なのだ。


 よろりとよろめきながら、唯一人、己に道を指し示してくれる彼の元に向かう。彼は、全てが歪んでいるこの世界に在りつつもその姿は今だ美しく、そして清廉だ。背後の景色に透ける白い翼が赤銅の空によく映える。
 今日は、いつもは酷薄に見える紅い瞳がほんの少し憂いに満ちている様に見えた。そう、何にも侵され難く見える彼であっても、罪に塗れ苦しんでいるのだ。その罪は僕に関係するという。僕にしか、癒せないという。
世界を狂わせた、罪。それは。
……彼と僕が共有する罪。
「共に有する」罪。それは。
……僕には、酷く甘い響きに聞こえた。
あぁ、歪んでいく。

 組んでいた腕をゆっくりと解きつつ、徐に彼が言葉を発した。
「人に罪があるというなら、それは、己だけの視座で世界を見る事だ。
そうは、思わぬか?」

思わずビクリとし目を見開いて彼を見つめた。己が今考えていた事が彼には判ったのだろうか。己の事しか考えていなかった自分。冷たい汗が背に流れた。いや、判る筈が無い。いくら彼といえども。
 彼は、やはり問い掛けたものの応えなど最初から求めていなかったようだ。一つ溜息にも似た息を吐くといつもの通り天使銃を投げ付けて言う。
「私と、お前の罪を癒す為に神経塔へ、最下層へ。」
言葉と同時に彼の映像は一瞬の内に掻き消えた。
咄嗟に伸ばした僕の腕は、拒絶されたかのように虚空を掻いて地に落ちた。

 その時ふと思い出した。そう遠くは無い過去、地下深くに潜り罪に嘆く者に言われた言葉。
「アナタの手モ血に染まっている。
アノ子タチを、コレ以上、苦しめないで。」

あの子達、とは誰なのか。その時の僕は疑問に思ったけれども。今の僕は、血に彩られているという己の手を見詰めていた。これでは、あの人に触れられない。清廉な、白く美しい天使には近付けない。
そうか、だから、拒絶されたのか、と。
僕は声を奪われた声帯を震わせて音も無く笑っていた。
あぁ、歪んでいる。


 僕はゆるりと立ちあがると、己が手に持っている剣を躊躇も無く己が腹に突き刺した。浄化能力を持つという僕。ならばこれで己の罪も身体も浄化してしまえばいい。神経を焼き切られるような熱さを感じる。口内から溢れる生命の源。
熱い、熱い、全てが熱い。
浄化の焔に焼かれているようだ。だが恍惚とする。これで、彼に近づけるならば。

彼が消えた足元に広がる血溜まりの中に、僕の身体は崩れ落ちていった。
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