「枳(からたち)」……SSブログサイト。(銀魂中心。他雑多。只今ヘタリアとかBASARAとかも。)

11 「テメェも大概趣味が悪ィ。」 


「アンタ、近藤さんに惚れてるでしょう。」
沖田は唐突に土方に問い掛けた。土方は一瞬呆気に取られた表情を取ったが、
「……今更何云ってんだ。」
と、平然とした口調で言葉を返した。惚れてるなぞ今更だ。照れる箇所でも隠すものでも有るまい。本人にも告げてある、周知の事実だ。

「抱かれてもいいとか、お思いで?」
「は?」
しかし今度こそ呆気に取られる。何を云っているのか此の莫迦は、といった顔付きで土方は沖田を嫌そうに眺める。だが、沖田は続ける。
「いやぁ、うっかりこんな本読んじまったもんで。」
と、沖田が差し出してきたのは「衆道の勧め」などという、書物。見た途端、土方は思い切り咽せ掛けた。
「総悟ぉお……。」
「御存知で?」
「……過去の産物だろうが。昔は武士の嗜みだとか云われてたが……。」
渋面を作る。如何、云うべきなのだろうか。如何、説明すればいいのか。
「…今現在迄残ってるモンでもあるめェ。」
「なら、抱かれたい、とかは思わない?」
「…………。」

 土方は其処で一瞬押し黙ってしまった。其れに気付いて、しまった、と思った時には既に遅し。沖田は貌を覗き込んできていた。
「……思ってるんで?」
「……クソガキ……。」
酷く苦々しい顔付きと口調。思い切り睨み付ける。だが沖田は、莫迦にするでもなくふむ、と一つ頷いた。
「良かった。俺ァ自分が頭可笑しくなっちまったかと思ってやした。」
「は?」
「俺だって、あの人になら別に抱かれてもいいって思っちまいやしたから。」
「ぶふっ。」
土方は今度こそ、咽せた。何を言い出すのだ此のクソガキは。生々しい、生々し過ぎるぞ此の様な話題は。だからガキは怖い。怖いもの知らずのガキは怖い。世間を知らぬ子供は恐ろしい。
 逃げ出したい心地で満載の土方なぞいざ知らず、沖田は未だ続ける。
「いやァ、俺ァ自分がホモなのかと思って一瞬悩んだでさァ。」
「一瞬かよ。」
思わず突っ込む土方。
「でも、そう思った対象は今んとこあの人にだけなので、ホモ…という訳でも無いなァ、と。」
「そうかィ……。」

 疲れた。酷く疲れた。土方は此の数分で10年程は歳を取った気がした。とっとと此の場から逃げ出したい、と視線を遠くへ飛ばす。
「んでも土方さんもそうだったのか。」
「……忘れろ。」
苦々しい面持ちで呟く土方。
 「義兄弟の契り」、「衆道は武士道の華」。昔なら尊ばれた道も、今では異端の道である。常識人を気取っている土方には到底、流されぬ限りは己からは歩めぬ。其れに、土方から近藤への気持ちは、「抱かれたい」、という訳ではなく「抱かれても構わない」なのだ。
此の二つは違う。大いに違う。土方は己に無理矢理納得させた。
 だが、そんな土方を沖田はじっと見詰めてくる。睨み付けても視線を逸らそうとはしない。心の内を強制的に掻き回そうとでもいう様な強い眼差し。土方は、沖田の此のデカイ眼(まなこ)が苦手であった。……暫し睨み合いは続いたが、根負けしたのか土方は肩を落とす。そして口を開く。

「………猿ってのはよ、権力を見せる為に雄同士でも交尾行動を起こすらしい。上位の者が下位の者を組み敷いて征服して、権威を示すんだと。猿の世界じゃ、性行動自体が今でも権力に繋がってんだな。」
やおら土方は話し出した。沖田は静かに耳を傾ける。
「……だが、所詮人間も同じだと思うんだよな。男にとってSEXは相手を支配する意味も持ってンだよな…。『此れは俺の女だ。俺のモンだ』っつー感じのよ。」
続ける土方。
「マウントポジションってヤツだ。…総悟、俺ァな、確かにあの人にならノられても構わねェよ。支配されても、蹂躙されても、何されても構わねェ。」
そうして、薄い笑みを浮かべる。
「ま、そういうこった。此れァ、惚れた腫れたや愛だ恋だなぞとももう違う。俺ァ、あの人に所有され続けたいってだけだ。道具としてでいい、使って貰いたいだけだ。だから、抱かれたいってのともまた違うんだよ。性欲はもう関係ねェ。…………もういいだろ。」
もう云う事も無い、と立ち去ろうとする土方。其の腕を唐突に沖田が取る。土方の右手首を握り締める。存外強い力。土方は眉根を寄せた。

「俺もアンタにノりたいですぜ。」
「…ハァ?」
「アンタの上に。何時かマウントポジション取ってやりたいですぜ。」
何を冗談を、と笑い飛ばし返そうとしたが、沖田の面を見ると声が出なくなった。沖田の顔は真摯に、真顔なもので。──本気なのか。ならば己も真剣に返さねばなるまい。土方は思った。
 ──唇を歪め、顎を引き上げた何時もの面をし。そして沖田に云い放つ。
「ハ…ッ上等だコラ。俺はお前なんぞにノられてやる気は更々ねェよ。」
続ける声は低く囁く。殆ど脅しに近い声音で。
「……今のテメェなんぞに所有されるつもりは、ねェ。」
だが其の声音すら、沖田は気にも留めない。
「知ってやすぜ。だからこそ、でさァ。易々と組み敷かれるアンタなんざ、元より眼中にねェ。」
「……テメェも大概趣味が悪ィ。」
「お互い様でさァ。…御覚悟を。」
 
 沖田の眼からは雄の視線を感じる。雄の匂いがする。支配する事に快楽を感じる男の眼だ。ガキだガキだと思っていたのに、何時の間に。──土方の喉仏が上下に動いた。唾を飲み込んだ音が周囲に響いた気がして、肩を揺らす。酷く緊張している事に、其の時気付いた。だが、表には僅かばかりも出さぬ、と努力をする。
──土方は身も心も雄だ。支配される事に歓喜する雌ではない。組み敷かれて悦ぶ性質では無い。

 だが。
 何処かで、何時か、何時の日か。目前の雄に、蹂躙される事を。所有される事を。
 支配される事を。
 ……望んでいる己が居る事にも、気付いていた。

 ──捕らえられたままの手首が痺れている。微かに、熱を帯びた吐息を吐いた。
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