「枳(からたち)」……SSブログサイト。(銀魂中心。他雑多。只今ヘタリアとかBASARAとかも。)

13 其れだけの話 


「──魂が、折れちまうんだよ」
そう云い万事屋を出て行った銀色の影。その男に、沖田までもが付いて行った。
 土方は一人、万事屋で残された。頭痛を感じながらも煙草を取り出し銜える。
…沖田は、あの銀髪の男に感化された模様。迷惑な話だ。どいつもこいつもとんだロマンティズムだ。
 土方には理解が出来ない。そもそも態々死にに行く者の気持ちなぞ、理解したくもない。緩く頭を振った後、ライターを取り出すと煙草の先端に火を灯す。ゆっくりと肩を上下させて息を吐き出した。

 ──煉獄関。此の国を裏から牛耳る天導衆の遊び場。金欲しさに集う浪人共が真剣を使い殺し合いをする場。真選組もおいそれとは手は出せぬ。下手をすれば真選組の存続すら危うくなる。
 だがいずれ、潰すつもりでは有った。虎視眈々と狙ってはいた。だが、今は其の時ではない。未だ時期尚早だ。土方は慎重だ。勝てぬ戦をするつもりは更々無い。臆病と云われ様とも時期を待つ。そして一気に片を付ける。慎重に慎重を重ねる。今迄そうやって動かしてきたのだ、真選組を。そうやって護ってきたのだ、真選組を。
 隊を護る為には己の私情を持ってして動くべきでは無い。…そうとなると沖田の行動は褒められる行動では無い。褒められぬどころか、事と次第によっては隊長格剥奪すら有り得る。若さ故か。少年期独特の先走った正義感からか。今直ぐ引き止めねば。あの莫迦は隊服のままでもある。
 隊に迷惑を掛ける様な真似はよもやしないだろうが…其処迄は愚かではないだろうが。……近藤に迷惑を掛ける訳は無いだろうが。
──…ったく、厄介な事に巻き込まれちまったよ。
土方は頭痛が酷くなるのを感じた。静かに煙草を燻らせる。

 暫し後、携帯を取り出す。リダイヤルから沖田の名前は直ぐに見付かった。通話ボタンを押し、耳に押し当てる。煙草は気怠げに右手指で持つ。10回程のコールで沖田は出た。遠くに聞こえる声。躊躇いがちな声。
「………はい。」
「オイ、」
「…何ですかィ。」
「総悟。」
「……小言なら聞かないですぜ。」
「聞けや。」
「嫌でさァ。…ちゃんと隊服も脱いでいくんで。隊には迷惑は掛けねェんで。どうか今回は見逃し──」
「聞けっつーてるだろ。」
見逃せという沖田の言葉を遮る。
「……。」
沈黙が返る。不満だろう。さぞかし不満だろう。──そりゃそうだろうよ。俺だって、こんな事態、不本意だ。

だが己の発する声は平静其のもので。其の声音で土方は言葉を紡ぐ。
「今から1時間後だ。16:00から作戦を決行。1番隊、並びに只今屯所にて待機している隊士を緊急招集する様。集合場所は──」
「へ…?」
沖田の呆けた声音は無視し、続ける。
「──…目標は煉獄関。火器銃器も使用可とする。」
「……土方さん…。」
沖田が息を呑んだ気配がする。構わずに続ける。
「一般人が侵入しているとの情報が有る。…其の莫迦共の安全の確保が最優先事項だ。…判ったらちゃっちゃと動け。時間がねェぞ。」
「あ………はいよ!」

 沖田は暫し戸惑っていた様だが、常に無く明るい声が返ってきた。其処で通話を切ろうとしたが、再度、土方さん、と声が掛かる。土方は面倒臭そうな所作で携帯を耳に押し当てる。
「土方さん、でも、何で──」
途切れ途切れの沖田の声が、ノイズ混じりに遠く聞こえる。
「何がだ。」
素っ気無い言葉を発する。
「アンタなら、絶対止める、かと。……何で。」

 …嗚呼、本当に何故だろうな。本当に。己らしからぬ、本当に。土方は苦笑する。
 煉獄関を潰す為に、其の準備の為に、今迄どれだけ苦心してきたか判っているのか?未だ動くべき時では無いのを判っているのか?潰されるかもしれぬ。…否、現状ならば上手く動けば何とかなるかもしれぬが。だが、危険なラインだ。矢張り未だ時は来ていない。──其れを判っていて何故動く。何故動かそうとする。真選組を。己の命よりも大切なものを。……何故だろうな、本当に。

 ──否。己は最初からこうするつもりだったのではないのか。最初から判っていたのではないか。奴等から話を聞いた時に、こうなると予想していたのではないか。何を今更ぐたぐたうだうだと抜かしているのだ、己は。何かと理由を付けてでしか動けぬ己自身に、土方は苦く笑う。そして、静かに言葉を発した。
既に迷い無い、揺ぎ無い、躊躇い無き声で。

「俺が動く理由なんざ、ンなモン……唯一つだろうが?」

…今回手を出せば、真選組へも相当なお咎めがあるだろう。上手く立ち回るつもりだが、松平や近藤に迷惑を掛けるのは必至だろう。本当は動くべきではない。大局を見る為には小事には目を瞑(つぶ)るべきなのだ。…其れは、判っているのだ。
──嗚呼、万事屋の莫迦野郎沖田の莫迦野郎。テメェらのせいだぞ畜生、畜生。

だが。──…だが。
土方は大きく息を吐き、そして吸い込んだ。

「……あの人なら、こうするだろうよ。」

 ──暫しの沈黙の後、沖田が電話口の向こうで、微かに笑う気配がした。其れを感じつつ、携帯を閉じた。

 ──……俺はまた、真選組を、あの人の望まぬ形にしようとしていたな。
 護る護るとは口ばかり。組の安寧と平穏のみを願い、異端を廃し汚い仕事にも手を下す。そんな蛇蝎の心を持つ己。一番大事な事を見失いかけていた己。
 あの人ならば、知ってしまったら形振り構わず行動しているだろう。そして自分は貌を顰めて苦言を発するんだ。けれどあの人は聞かないだろう。そして、やれやれと、頭を痛めるのも己だろう。
 …其れならば其れでいい。其れでいいんだ。ならば俺は、ほんの少しだけ先回りして、彼の行く道が少しでも平坦になるように踏み締めていければいい。道が出来た其の後は、唯あの人の背を追いかけていくだけだ。何時もと変わらない。そうだ、何時もの事ではないか。
 真選組はあの人の魂だ。あの人自身だ。彼が不在の今は、己が代わりに指揮をしているだけなのだから。預かっているだけのものだ。あの人の魂。其れを己が曇らしてしまっては、本末転倒ではないか?護りたい気持ちだけが強まって、本分を見失ってはいなかったか?
 万事屋の魂というものは目に見えず、あの男の頭から股間をぶち抜いて存在しているらしい。目に見えぬモノをああも語られても己は知らぬ。
 己の魂は目に見えているものだ。目に見えて、形としても存在している。其れがあるから己は真っ直ぐに歩いていける。道に迷わず進んでいける。

 …近藤さん。
 アンタなら、屹度(きっと)こうするだろうよ?そう、後先関係なく行動するだろうよ。そして俺達が同じ様に行動したとしても、アンタなら笑って許してくれるだろうよ。余り危ない事はせんでくれ、と心配はするだろうが。……ちっとばかし、迷惑も、掛けちまうが。でも、アンタは迷惑だなんてこれっぽっちも思わねェだろうけども。

 最後の最後は俺が腹ァ、斬れば良い。其れだけの話だ。簡単な事だ。

 ──アンタの魂は俺が護る。其れが俺の願い、魂、命、其のものだ。
 唯、其れだけの話だったな。
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