「枳(からたち)」……SSブログサイト。(銀魂中心。他雑多。只今ヘタリアとかBASARAとかも。)

20 想う 


 警察機関は連休中だろうと、否、連休中だからこそ多忙な職務である。
 土方はいつもの如く市内を巡回していた。其の隣には此れもまたいつもの如く沖田総悟の姿がある。別に仲が良いから頻繁に一緒に居る訳でも無い。寧ろ最悪の仲だ。唯単に、サボりまくる癖のある沖田のお目付け役として土方が付いている、其れだけの事。

 土方のそんな魂胆は見え見えである。沖田は至極やる気の無い、だが半端無く嫌そうな面で土方に話しかけた。
「土方さん、そろそろ俺のストーカーは止めてくれませんかねェ。」
「だーれがテメェのストーカーだ。」
「いつもいつも俺の行くとこ行くとこ付いて来やがる。」
「お前がサボるからだろうが。仕事しろ。」
「アンタそんなに俺が好きか、好きなのか。」
「よーし其処に居直れ。首ちょん切られたくなかったら仕事しろ。」
「真選組の局長副長揃ってストーカーだなんて、恥ずかしくてお天道様の下歩けねェや。」
「安心しろ、テメェの存在自体が元々恥ずかしいわ。仕事しろ。」
「良い天気ですねィ。」
「お前人の話聞く気全くねーだろ。頼むから仕事しろ。」
「風が気持ち良いや。」
「仕事しねーならもう其のまま風に飛ばされちまえ。帰ってくんな。」
二人していつもの如くの遣り取りである。

 そんなこんなしていたら。またもや目を離した隙に沖田に逃げられた土方である。
沖田が出没する可能性のある甘味処からコンビニ、志村道場、万事屋付近迄も探したが一向に見付からない。屯所にも戻っていない。勿論携帯に出る訳も無い。土方は己の携帯を握り潰さんばかりに苛立った。不機嫌オーラMAX状態のほぼチンピラ紛いの風情で街を練り歩いたもんだから、土方の其の面を見て泣き出す子供も居た程だ。此の男も傍迷惑な男である。

 最後、此処に居なければ諦めるか、との思いで、沖田が良くサボって昼寝をしている河原へと赴いた。子供達が遊ぶ声がする。周囲を見回すが、隊服姿の男の姿は見当たらない。土方は思い切り疲れた面持ちでしゃがみ込んだ。水の流れる音がサラサラと涼やかだ。涼やかな音と景色とは反対に、土方の周囲はどんよりとしていたが。
「も…やだ…。アイツの相手すんのもうヤだ、もうほっとく…。」
一気に気が抜けたのか、必死になって探していた己が莫迦みたいだ、と自嘲し唇を歪める。不貞腐れた風情で懐から煙草を取り出すと銜え、火を点した。

 目付きの悪い土方がヤンキー座りをしながらヤニを吸っていると、本当に唯のチンピラである。周囲で遊んでいた子供達は、土方から若干離れた。如何やら怖がっている様である。茫洋としていた土方であるが、子供達の其の様子に気付くと、軽く舌打ちをした。元々、子供に好かれる性質ではない。一服したら直ぐ立ち去ろう、と決意する。子供達はひそひそと話をしている。聞こえぬ様に話しているつもりなのだろうが、其処は子供、土方にも丸聞こえだ。
「服同じだけど、いつものにーちゃんじゃないね。」
「ヤンキーだ、ヤンキーが居る。」
等々。土方の苛立ちは更に募った。いつもの兄ちゃん、とはきっと沖田の事だろう。あのクソガキ、どんだけサボってんだ、つか誰がヤンキーだ。等々、苛々しつつもヤニをふかす。だが子供達は暫くは土方の事を気にしていた模様だが、直ぐ様興味を失ったらしく、また遊びへと興じ始めた。

 子供達は、如何やら四つ葉探しをしたり花冠を作ったりして遊んでいる模様である。そういえば一面に白詰草 (しろつめくさ)の白く小さな花が咲いている。甲高く笑っている子供の声を背景に、土方は己の足元を眺めた。そして徐(おもむろ)に花を一輪、手折った。続いてもう一輪、そしてもう一輪。見よう見真似で編み込んでみようとするが、直ぐに解けた。存外、難しい。もう一度、今度はゆっくりと編む。だが柔らかな茎は、土方の粗雑な手指の前に儚く折れた。ぱらぱらと解けた無残な花の残骸を見下ろしながら、土方はふと、過去のある一点を思い出した。
 土方は花冠なぞ作った事は無い。手先は器用だが、女子でもないので其の様な遊びはしなかった。だが一度、頭部に冠を乗せられた記憶はある。遠い記憶だ。細い指先で冠を編んでいた。土方の頭部へと其れを乗せ、綺麗に笑った──少女。
土方は、其の儚くも美しい笑顔を直視出来ずに、視線を逸らした。視線を逸らした先に、己の事を嫌っている少年が居て、思い切り舌を出されたが。其処で己の頭部に乗っていた花冠を毟り取り、其の少年の頭部へと押し付けた。そんな、記憶。
土方なんぞよりも、其の姉弟の方が余程花が似合っていた。土方はあの姉弟を眺めているのが好きだった。土方はあの少女が──。
──そんな、記憶。

 土方は小さく笑った。己には似つかわしく無い、穏やかな記憶だ。胸に刺さる棘の様に痛む思い出も多いが、寧ろ其ればかりだと思っていたが。此れは春の木漏れ日の様に暖かな過去。土方は、笑った後に微かに苦く顔を歪めた。
 何も特別が欲しかった訳じゃない、唯、傍に居たかった。其れが叶わぬなら、唯、幸福を祈りたかった。
──…もう戻れぬ淡い思い出だ。
 吹っ切るように頭を一振りする。煙草を携帯灰皿へと押し付けると、立ち上がろうとした。だが其の時、挙動が止まる。己の足元の草むらを眺める。ゆっくりと其処へと手を伸ばし、もう一度、ぷちりぷちり、と引き抜く。そして立ち上がった。


「オイ、ガキ共。」
草むらで戯れていた子供達が見上げると、其処には巨大な黒い影が立っていた。一瞬怯えた表情を浮かべる子供も居る。
黒い影──土方は、だが片眉を上げるが何も言及はせず、唯一言、
「やる。」
そう言い子供達へと手を差し伸ばした。
人を斬り人を殺める。土方の其の危険な手には似つかわしくない物が其の指先にはあった。
土方の無骨な指先に握られていたのは、先程から子供達も探していた『四つ葉のクローバー』。子供達はおずおずと土方の手元を眺めると、おぉ、と感嘆の声を上げた。自然界における四つ葉の確率は十万分の一とも言われている。土方とて、見付けたのは今が初めてだ。
 土方は、幸運の象徴と呼ばれる其れを、言葉の荒々しさとは全く異なる優しげな所作で、子供の手へと握らせる。
「え、ほんとに良いの?」
一人の少女が問うたが、何も答えずに背を向けて歩き出す。其の背に、おじちゃんありがとぉお!!との声が聞こえて、だーれがおじちゃんだ!!と怒鳴ったりはしたが。

 土方は土手へと上がりながら、未だ手に持っているものへとふと視線を落とした。子供達へと渡したものとは異なる。四つ葉でも何でもない、何の変哲も無い其れを眺める。そして微かに笑う。
──……俺ァ、四つ葉よりもこっちのが良い。
先程戯れに引き抜いた三つ葉の小さく可憐な葉に、口付けた。
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