「枳(からたち)」……SSブログサイト。(銀魂中心。他雑多。只今ヘタリアとかBASARAとかも。)

15 独白 


 昔はよ、俺の衣装や形(なり)を見て、
「白夜叉」
だの
「アイツの姿は死装束だ。」
「死に行く覚悟を決めている者の姿だ。」
なーんて、好き勝手云う奴等が居たもんだ。白夜叉ってのは今やほんの一部の人間にとってはちょっとした伝説チックになっちまってるらしいがよ、こちとら勝手に名付けられたもんだから良い迷惑だよ。

 死装束だ?唯白い着物着てただけじゃねーか。死に行く覚悟?ンな大層なモン、此れ見よがしに見せ付けて如何するんだよ。誰だって死にたかねェよ。当たり前だろうが。けど、死にたくねェが欲しいモンが有る、護りたいモンが在る。命を賭けなきゃ其れらは手に入らない。だから存分に足掻いて戦ってたんだよ。ンな、覚悟持って死地に臨んでたのは、何も俺だけじゃねェよ。
「人を斬る時は、己も死ぬ覚悟をしなければならない。」
其れは判ってるし道理だとも思うんだが、やっぱ俺ァ、死にたくは無かったよ。乱戦でそんな捨て身の攻撃ばっかしてたら身がもたねェ。尤も、死にたくない、だなんて云える空気じゃなかったけどな。
 ──死ぬ覚悟はしていたよ。命を捨てる覚悟はしていた。けれども死にたくは無い。最期迄、生き足掻く為に皆が必死だった。そんな時代だった。

 そんな意味では、ヅラは立ち回りが上手かったな。莫迦だったが。莫迦だが、大層な戦上手ではあった。敵に背を向けるのは武士の恥、とされていたというのに、逃げる事をも恥じない。臆病だと罵られても引き際を心得ていた。アイツのお陰で生き長らえた奴等は多いと思う。今もアイツァ逃げ足凄ェもんな。奴はきっと長生きするわ。
 坂本は……奴も莫迦だったが、剣の腕は確かに上手かった。そして奴の目は何時も常に三歩程先を見ていたな。もう既に刀の時代じゃない、侍の時代は終わったのだ、というのを逸早く理解し、天人達の持つ武器や文化に目を向けていた。だが、奴は先を見過ぎている。其れが不安だった。奴には時代が未だ追い付いて来ていなかった。今もそうかもしれない。奴が簡単に死ぬとは思わねーが、何時か足元掬われて転がっちまうんじゃねーか、との不安を感じるのは其のせいだな。
 高杉も莫迦だったが、って、こうして見れば莫迦ばっかじゃねーか。莫迦しか居なかったのかよ。……奴は、今も昔も、一番危うい、な。何であんなに不器用な生き方しか出来ねェのか。莫迦だが勉学は相当に出来たし、剣の腕も凄まじかった。俺には理解出来ねェ歌詠みやらにも興味を持っていた風流人だった。だが戦術にも長けていた筈なのに、何時も死に掛けてた気がする。幾ら賢くても、其処が莫迦だった。今思えば、奴ァ、死にたかったのかもしれねェな。…奴は長生き出来ねェ気がする。する気も無いだろうけどな。

 まぁアレだ。周囲が自由好き勝手に云ってくれちゃったお陰で、俺は何だかものっそぃ格好良い侍だった風に語られる様になっちまった。や、今もカッコイイだろけどね。
 けど侍、だなんて云っても、当時、性根から「侍」の魂を持った人間なぞ、もう殆ど居なかったんじゃねーかな。攘夷だ尊王だなんだかんだ、そんな小難しい思想を振り撒いて、訳判らん行動を取る野郎共をひっくるめて「侍」っつー名前を付けただけなんじゃねーかな。そして結局は淘汰されちまっただけなんじゃねーのか。…俺らとて、大義名分掲げて理由捏ね繰り回して、殺人行為に理由付けてただけなんじゃねーのか。天人相手だとしても、ありゃぁ立派な殺人だったろうて。今となってはそう思う。
 一人殺せば殺人者だが、百人殺せば英雄。まさにそんな時代だった。時勢の波に飲み込まれ、熱に浮かされていただけなんだろうな。…あんな事をしても、大事な人は戻って来ないってのも判ってたんだが、な。


 そもそも、白夜叉だとか云う異名にしたって、白い戦装束にしたって、実は此れ全部ヅラ達が仕組んだことだ。俺が望んだ訳じゃねェ。
 俺ァやっぱ、髪がこんなんだから当時からも目立っちまってたんだよな。天人じゃないのか、とかも散々言われ続けてたし。戦況が芳しくない中皆気が昂ぶってたからさ、何かの些細な切っ掛けだけでも、異端分子の俺は簡単に排除されるやもしれなかった。奴等は常に加虐対象を欲しがってたからな。恐ろしい事に、人と何処かが少しでも違うだけで、誰でもそういう対象になり得るんだよ。面倒なもんだよな、集団心理ってのは。
──俺は、そんな危うい立場だったんだよ。

 だがヅラ達は、俺の其の立場を逆手に取った。奴等はやっぱり策士だな。阿呆な野郎共な癖にこういう所の根回しは酷く上手かった。
──つまりだ。つまり、俺を生贄にしたんだな。

 生贄たァ聞こえが悪ィかもしれねェが、実際そうだ。俺に故意に目立つ姿をさせ、「白夜叉」、なぞという大層な名前を付け其れを敵味方へと吹聴し浸透させ、あれよあれよという間に、俺を攘夷戦争の「象徴」めいた存在へと仕立て上げちまった。
「戦場に白き獣在り」
だなんて、かっちょいい事云われりゃ、餓鬼だった当時の俺にはそりゃ悪い気はしなかったが。俺ァ、ジャンヌ・ダルクかっての。生憎神の声も仏の声も聞いた事なぞねェっつの。俺に聞こえたのは、ひもじくて腹の虫が泣く音位だったっつの。
 目立つってのはよ、攻撃対象にも成っちまうんだよな。ジャンヌの様に少女であった訳でも無く、旗持ちをしていた訳でも無い。俺は侍だった。侍のつもりだった。指揮官なんぞ向いていない俺は、常に最前線に立っていたから、余計に悪目立ちしちまっていた。真っ先に狙われてた。狙われまくっていた。どてっ腹に大穴こさえた事も何度も有らァね。
 けど今俺は、此処でこうして五体満足、生きている。俺の剣が磨かれたのは、あの戦場あっての事だ。道場等でマトモに稽古した様な記憶は、実際殆どねェよ。型が滅茶苦茶なのも粗野なのも粗雑なのも仕方ねェ話だ。ほんと、良く生きてるもんだわ。

 ……何だかんだ云ってもよ、奴等に護られてたのも事実だから、今更文句云う気も更々ねーけどな。表向きの「象徴」にされてなきゃ、其れこそ身内連中の慰み者にされたに違いねェ。あ、変な意味でじゃねェぞ。
 戦争に参加してた奴等なんぞ、天人を武力行為で廃そうという過激な攘夷思想の連中揃いだったんだ。そう、異端は廃されるんだよ。俺は、中身はどうあれ、目に見える形で異端だった。だが三莫迦トリオに護られていた。…そういうこった。

 まァ、本音云うと、戦争時代の事は思い出したくはねェな。忘れる訳にもいかないが。やっぱ、狂気の時代だったよ。今はもう刀ぶんぶん振り回す時代何かじゃねェ。精神的にどっかプッツンイってなきゃ、あんな行動は起こせねェ。俺達ァ、結局は唯の人殺しだったんだ。
 そういえば、白い着物なら今も着ているじゃないかって?此れァ似合うからよ。似合うモン着て何が悪い。色白いし、髪もこんなんだし、やっぱ俺には白が似合うだろ?
白い装束。ンな程度で過去に回帰させられる程、今更引き摺っちゃいねェし弱くもねェんだよ。それに姿形を幾ら変えたところで、俺の中の何かが変わる訳でもねェ。やっちまった事が変わる訳でもねェ。

 とかなんとか、難しく考える必要はねーんだよな、結局は。足掻いてももがいても無駄だ。過去からは逃れられないのは重々承知だよ。
今更どんな形(なり)しようが何も変わらねェんだよな、今更どんな奇麗事云っても仕方がねェんだよ。


──護りたいものを護る事すら叶わなかった。白い夜叉鬼は未だ俺の中に在る。
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