「枳(からたち)」……SSブログサイト。(銀魂中心。他雑多。只今ヘタリアとかBASARAとかも。)

17 酔いどれ男共の戯言 


 奴は強欲野郎なのだと思う。
アレも欲しい、コレも欲しい、と何でも欲しがる餓鬼なのだろうと思う。人にしても、物にしてもだ。欲しい欲しいと駄々を捏ねて何とかして手に入れようとする。寂しがり屋なのだろう。構われたがりなのだろう。
 そうして手に入れたモノを両手一杯に抱えている瞬間が、とても幸せそうなのだ。

 自分は臆病野郎なのだと思う。
アレも欲しい、コレも欲しい、と何でも欲しがった。餓鬼だったんだな。人にしても、物にしてもだ。欲しい欲しいと駄々を捏ねて何とかして手に入れた。寂しがり屋だったのだろう。構われたがりだったのだろう。
 そうして一度、全てを失った。
もう二度と何も抱え込まない、何も背負い込まない。そう誓った筈なのに。


「アイツを見ていると、如何にも歯痒くて仕方が無ェ。」
奴を見てそう思う。


 銀時にはほんの時たま見る夢が有る。気持ちの良い夢では無い。夢である、という自覚も有る。だが、此の夢を見ると常に飛び起きる。嫌な汗に塗れた身体を見下ろして溜息を吐くのだ。
 銀時には、己が未だ過去を引き摺っている、との自覚は有る。だから見る夢なのだろう。此の全てを昇華しきるには、一生掛かっても足りないのでは無いだろうか。
 過去に振り回される程銀時は弱くは無い。今とて、時々夢を見る程度なのだから弊害も無い。だが、夢を見た後の数日は陰鬱な気持ちになるのは仕方が無い事かもしれない。

 何時も何時も荒野を歩いているところから夢は始まる。
空は暗く、濁っている。パチパチと爆ぜる草むら。周囲には嗅ぎ慣れた匂いが漂っている。己の身も赤錆びた臭気を放っている。焼かれ飛散した脂肪でべた付く身体、周囲に飛び散った血肉。
刀だけでは如何しようも無い、一方的な虐殺。
刀身の欠けた刀を引き摺りながら銀時は歩く。仲間を探して。

 銀時の率いていた隊は、敵陣に先んじて切り込んでいく、謂わば切り込み隊的な存在だった。そんな隊など、銀時は要らない、一人で良い、とそう提言したが赦されはしなかった。そもそも先陣を切る役目なぞを引き受ける莫迦が他にも居るのかとも思ったが。だが戦場の高揚感からか英雄に憧れる心からか。「白夜叉が率いる」、其れだけで名乗り上げる者も多かった。最初は莫迦だ、莫迦ばかりだ、と醒めた心地で思っていたものだが、だが、慕われるのは嬉しかった。仲間というものは良いものだと、心底思った。互いに何時果てるとも判らない身だからこそ、大事にしたい仲間達だった。

 ──其の全てを失った。先程己の背で一人、死んだ。其の死体は捨てた。生者にしか意味が無い訳では無い。唯、銀時には此れ以上背負いきれなかっただけだ。死者の身体も想いも全て背負っていては何時か潰れる。仲間の死体を踏みながらも、生きている者を探し銀時は歩いた。
 だが恨みの声が聞こえる気がする。──最も天人を殺し最も憎まれている筈のお前が何故、生きている。痛い、苦しい。何故、俺達が俺が死なねばならない?そもそもお前の下に付いたのが間違いだった。何が白夜叉だ何が何が何が何が。

…お前も死ね!!!

 ──仕方ないじゃないか。俺はお前ら全てを背負える程、強くは無い。夢を見るのも理想を追うのも勝手だが、其れを押し付けてこないでくれ。俺は死なない、俺は死ねない、俺は死にたくない、死にたくない。

死にたくない!!

 銀時は膝を付き、耳を塞いで絶叫する。
 其処で、何時も目が覚める。

 自分勝手な思い込みと罪悪感で潰れそうになった過去。貌を背けつつ茫洋と生きてきた其れからの年月。
 仲間の一人は、早々見切りをつけて空へと上がった。脳みそは空っぽだったが、今思えば一番賢い男だ。もう一人は、銀時以上に過去に囚われている。だが、前も向いて歩いている。銀時以上に強い心の持ち主だ。そしてもう一人は。未だ過去しか見えていない。昔の己の姿と今の奴は同じだ。奴の耳にも、妄執に囚われた者達の声が聞こえているのだろうか。──昔も、今も。
 

 夢見が悪かった日は、酒を飲んで発散させるに限る。逃避行動だという事は判ってはいるが。思考を鈍らせる酒の力を借りたい時もあるのだ、常日頃は能天気人間な銀時とて。
「あれ、銀時?」
そうして銀時が居酒屋のカウンターでチビリチビリと酒を嗜んでいると、唐突に声を掛けられた。濁った視線を声を掛けてきた男に向ける。其処には近藤が居た。最近時たま、本当に時々だが、こうして出会う事がある。
「おーゴリラが動物園から逃げ出してるぞ。」
「しょっぱなからゴリラかぃいい!!」
すぱこーん!と頭部を張られるが然程痛い訳では無い。──銀時はゴリ…近藤に対し鼻で笑いながら話し掛けた。
「何してんの。私服って事は…仕事終わったのかよ、給料泥棒税金泥棒さんよ。」
「おー、一応な。疲れた疲れた。」

 近藤は銀時の挑発めいた発言も軽くいなして、よっこいせ、と親父臭い発言をしながらも銀時の隣に座った。其の所作には何の躊躇も無い。銀時にしても、近藤に隣に座られても何の違和感も感じなかった。瞳孔の開いた優男相手とは大違いである。
 此の男の此れが特性なのだろうか。一度は刃を向け合った仲であるのに、此の無防備さはなんなのだろう、と思う。誰の懐にも違和感無く入り込んでくる。するりと、知らない内に気付かぬ内に、心地良さと共に。不思議な男だと、そう思う。

「今日は金魚の糞はどーしたよ。」
「え?」
きょとん、とした顔を向けられる。意味が判らなかったのか。──銀時は、近藤に対しては意地が悪くも甘くもなっている自覚はあった。何故だかは判らない。弄りたくなるタイプだからだろうか。確かに苛め過ぎても罪悪感を感じるのも事実なのだ。仕方が無いので云い直してやる。
「土方君やら沖田君の事だよ。今日は一人か?」
漸く合点がいったのか、近藤は笑った。
「何時も何時も一緒な訳じゃないさ。」
「ふーん。ま、そんなもんか。」

 そんなこんな、実の無い会話を続けていたが、矢張りというか当然というべきか、お妙の話となった。酔いが深まった近藤はデカイ声で叫んでいる。
「お妙さんはーー何時になったらーーこっちを向いてくれるんだろうかーー!」
「一生無理じゃね?」
「ンな事云うなぁああ!!絶対振り向かせてぇええみせる!!」
「ストーカーは犯罪行為だぞ。つか煩ェ。」
そう合いの手を入れてやりながらも、銀時は常に無く苛々としてきていた。普段ならば軽く受け流す話であるのに。元々精神状態も鬱々していたのだ。何時もよりは若干余裕が無い。
 しかし、此の男は何時も何時も、何故こんなに。こんなに真っ直ぐで在れるのだろうか。ふと疑問に思った。

「テメェ、怖くねェのか?」
「何がだ?」
キョトンとした面を晒す近藤に対し、感情が見えぬ様に取り繕った視線を向ける。
「自分の全部晒しちまう事がよ。」
「はん?」
「全部晒して、幻滅されて離れられたら、とか、そういう事思ったりはしねーの?」
現に妙に対しては、全部晒し過ぎてドン引きされているだろうに。何故あそこ迄出来るのか。銀時には到底理解出来ない。
「あー。」
漸く納得がいったのか。近藤は気の抜けた返事をしてきた。銀時は内心苛々とした。
如何にも。コイツを見ていると──。だが近藤は銀時の心などいざ知らず、といった心地でのほほんと話し出す。
「そりゃ怖ぇだろ。」
「……。」
「でもなぁ。俺ァなァ、俺の全部愛して欲しい人なのよ。」
「……。」
「んでなァ、相手の全部も愛したいのよ。どんな面もなァ。」
「……。」
「どんな奴にだって良い面も悪い面も有るってのは判ってるさ。だがなァ…。」
「どんだけ強欲なんだ、此のゴリラは。」
「今ゴリラっつった?またゴリラっつったよね?」
「煩ェ。」
「まァ。強欲、其の通りだろうなァ。愛されたい愛したい。滅茶苦茶業突く張りなのさ。」

「……テメェがンな風に在れるのは、全部失くした経験が無いからだ。」
「へ?」
酷く意地悪な声音が出た。嗚呼、俺は今可笑しな事を云っている。銀時は思う。だが止まらなかった。歯痒くて堪らない。歯痒くて苛立った。だが云った後直ぐ様後悔した。近藤に当たる様な言動をして、一体如何するというのだ。
「…銀時。」
「……悪ィ、忘れろ。」
首を一振りした後、銀時は笑った。普段通りのやる気のない素振りで手をひらひらと振った。だが近藤は笑顔を見せなかった。言葉を紡ぐ。
「失くした経験が無い…か。」
そして一度言葉を区切った。
「そうかもしれないな。…何て、俺が云うとでも思ってんのか、銀時。」
常に無く低い声に、銀時は押し黙ったままだ。己が失言をした事実は判っている。
「銀時、お前がどんな経験をしてきたかは俺ァ、知らない。だが、俺の立場を甘く見られるのは御免だ。……仲間を失うのは、辛い。」
「…悪かったって…。」
平穏の世の中にあっても、真選組の立ち位置は血生臭いところにある。常に危険と隣り合わせである事は理解している。其れは判っていた筈であったのに。銀時は苦い顔で再度謝罪する。
「悪かったよ。…唯の八つ当たりだ。」

「銀時。」
近藤は、銀時の普段とは異なる風情を見てか、意外そうな貌をしつつも、其れ以上は咎めてはこなかった。ぽりぽりと頬を掻いた後、言葉を発する。
「俺ァよ、銀時。」
「……?」
「テメェを見てると、歯痒くて苛々する時あんだよ。」
「…あ?」
何を云うのか此のゴリラは、と銀時は瞑目した。苛々しているのは此方だ、とも思った。だが近藤は続ける。
「テメェの護りたがりなところ。やる気無い風情の癖に、全部抱えようとしてしまうところ。何だかんだいってお節介なところ。」
「……あァ?」
「見てるとなァ、何ていうのかなぁ。……腹が立つ?」
「あんでだぁあ!!!」
銀時は机を拳で叩いて絶叫した。とっくりがごろりと転がった。中身は殆ど入っていなかったが。
「其れを云いたいのはこっちだゴリラ。」
「またゴリラっつった!」
近藤の非難の声を無視し、銀時は告げる。
「テメェの何でも欲しい欲しい、なのに全身無防備だっつーところ、清濁併せ呑むっちゃー聞こえは良いがよ、俺から見てもテメェは歯痒い。ムカつくんだよそういうとこ。」

「…さて。なら何でムカつくんだろな俺達は?」
近藤は、じっと銀時を見詰めてきた。視線を逸らす事を赦さぬ瞳だ。強い目に、しかし銀時はたじろかずに視線を返す。そして吐き捨てる様に云い放った。元より、銀時的には判っている話だ。
「……似てんだろうよ。そういうとこだけは。」
近藤は眼を瞬かせた後に笑った。大声で笑った。銀時も暫しの間は渋い貌をしていたが、次第に笑いが込み上げてきた。そして肩を揺らして笑った。
「そーかそーか、似た者同士だからかっ漸く納得したっ。」
銀時の背をバンバン叩いて笑う男。痛ェよ此の糞ゴリラ、と毒づきながらも甘んじて受ける。
「あぁ、だからだな。」
近藤は続ける。
「アン?」
「トシだよトシ。後、総悟もだ。」
何故今土方達の名前が出るのだろうか、と銀時は不思議に思った。近藤はウシシ、と奇妙な声を上げて笑う。
「俺ァな、トシと銀時の方が似てると思ってんだがな。」
「胸糞悪い、止めてくれ。」
本気で嫌そうにうげーと貌をしかめてみせる。
「けどなァ。奴等がお前に惚れてる理由が判ったわ。」
「ぶふっ!?」
惚れている。其の言葉に近藤的には他意は無かったろう。だが疚しい事をしている身としては吹いてしまった。
「惚れ…って…ないないないない。」
「いーや。人に懐かないトシや総悟が、お前には懐いてる。」
「あれで懐いてんのかよ。」
「自分から誰かに突っかかる事なんて、無いからな奴等は。」
「へぇ…。」
「あいつ等が何で銀時に懐いてんのかなーって考えたら理由も判った。」
「…?」
「お前と俺もどっか似てるからだ。似てるなんざムカつくけどな。」
ニカっと笑う近藤。一瞬其の言葉の意味が理解出来なかったが、理解した途端、銀時も意地悪げに
笑った。
「えらい自信家だな、大将よ。」
近藤に惚れているからこそ、似ている銀時にも惚れている、そう云いたいのか、このゴリラは。だが近藤はイヤイヤイヤ、と首を振った。
「自信家な訳じゃねーよ。好かれてるって自覚は有るけどな。けどな、
『俺が奴等に惚れてて手放したくない』から、ずっと好かれ続ける為に毎日一生懸命なだけ。」
此れでも毎日頑張ってんだぞ、とそう云い、再びニカっと笑う男。
「…其れの何処が自信家じゃねーっつーんだ、ゴリラ。」
「またゴリラっつーたぁあ!!」

 似てる似てないなんてのは如何でも良い話だが。莫迦な話をしている内に夢見の悪さは消え去った。
今夜は良く眠れそうだ。未だ横で騒いでいる近藤に皮肉を云いながらも、内心で感謝する。


 奴は強欲野郎なのだと思う。
アレも欲しい、コレも欲しい、と何でも欲しがる餓鬼なのだろうと思う。人にしても、物にしてもだ。欲しい欲しいと駄々を捏ねて何とかして手に入れようとする。寂しがり屋なのだろう。構われたがりなのだろう。
 そうして手に入れたモノを両手一杯に抱えている瞬間が、とても幸せそうなのだ。

 自分は臆病野郎なのだと思う。
アレも欲しい、コレも欲しい、と何でも欲しがった。餓鬼だったんだな。人にしても、物にしてもだ。欲しい欲しいと駄々を捏ねて何とかして手に入れた。寂しがり屋だったのだろう。構われたがりだったのだろう。
 そうして一度、全てを失った。
もう二度と何も抱え込まない、何も背負い込まない。そう誓った筈なのに。


「互いに痛い目見ても性根は変わらないもんだな。なァゴリラ?」
近藤に笑いながら、銀時はそう云った。
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